現役銀行員、語る

しがないバンカーが銀行の裏側や世の中について語ります

銀行はマイナス金利では金利収入は減らない??

最近、銀行の業績が落ち込んでいるニュースや新聞記事がしきりに出るようになりました。

一部報道では銀行口座の管理手数料を取り始める準備が進められているなんていうものも、、、(現場の僕でもどうなっていくのかわかりません)

 

銀行の業績がこんなに苦しくなってしまった原因は、マイナス金利だとよく言われますね。 

、、、果たして本当にそうでしょうか?



今日はマイナス金利について少し考えたいと思います。

 



 

 

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そもそもマイナス金利とは

 

マイナス金利とは日銀の施策で、

銀行が日銀に預ける預金において、預金金利をマイナスとする

ものです。

 

中学生の時に社会で習ったかもしれませんが、

日銀は「銀行の銀行」として、日本の銀行から預金を預かります。

これまでは日銀から各銀行(=預金者)へ利息を払っていましたが、それが逆に、銀行が日銀に利息を払わなくてはいけなくなりました。

これがマイナス金利です。現時点では-0.1%が適用されています。

 

ただ、銀行の預金全部にマイナス金利が適用されるわけではありません。

預金の残高に応じて「プラス金利」「ゼロ金利」「マイナス金利」の3層に分けて金利を支払い・受け取りしています。

金利はそれぞれ、「+0.1%」「0.0%」「-0.1%」です。

銀行全体でプラス金利部分は200兆円超、対するマイナス金利部分は20兆円程度、

 

つまり、銀行はマイナス金利の今でも日銀から金利を受け取っているのです。

 

20兆円部分について0.1%受け取っていたものが-0.1%まで下落すると、

20兆円×0.2%(下落幅)=400億円の収入減少ですが、

銀行全体での収益減少額はそんな金額の比ではありません。

金利益と言われる、お金の貸し借りで得られる銀行の国内本業利益は、ここ2年で3,000億円以上減っていて、地方銀行は全体の4割が本業赤字です(2018年度決算)。

その原因は何でしょうか?

 

業績悪化の実態

 

ここまでの考え方ではマイナス金利を考える上で、重要な部分が抜け落ちています。

それはマイナス金利から連鎖して起きたと言えますが、キーとなるが「銀行の融資機能」です。

銀行はお金を貸す融資機能で儲けていて、融資による利息収入が銀行の儲けの柱の一つです。

マイナス金利が導入されたことによって、

 

銀行は日銀への預け入れを増やすと支出(=金利の支払い)が増える

⇒余っている資金はどんどん貸し出そう

 

という発想で、どこの銀行もこぞって貸出を増やそうとしました。

結果、

銀行の営業マンによる「お金借りてください合戦」が始まり、競合が激しくなったことで銀行は金利(=利鞘)を削り合いました(これは現場にいる僕が身を持って体験しました)。

銀行の利息収入は「貸出金額×利鞘」なので、一時的には貸出を増やしたことでカバーできたとしても、返済が進むと結局利息収入は先細りが目に見えています。

一度始まってしまったこのダンピングレースの代償は大きく、年々銀行の利息収入は減り続けています。

裏を返せば、どこの銀行も自分の利益を優先しようとした結果、自分の首が絞められてしまった、と言えます。

 

ここから先は個人的見解が入りますが、仮に日銀のマイナス金利政策が終了し金利の上昇局面になったとしても、この低金利競争からは脱却できないように思われます。理由としては、

金利が上がっても銀行の利鞘は変わらない為、自動的に収入が増えることはまずない

②利鞘を上げると他行に借り換えされ、本末転倒となるリスクがあるため踏み切りにくい

こんな懐事情が挙げられます。

 

ただ一方で、金利が上がると銀行は色々な金融の派生商品を活かせますので、収益機会が増えることに間違いはないと思っています。

 

これからの銀行

 

業績悪化が止まらない銀行はどこへ向かってるのでしょうか?

マイナス金利による、利息収入の減少に加え、キャッシュレス化の進行により振込手数料収入もこれから減少していくでしょう。

現実的な回答としては、「どこの銀行も模索中で答えが出ていない」と思われます。

 

模索例としては

スマホでの決済業務に参入する

(現時点では収益化は厳しい分野だと思います)

・専門性を高めることにより、コンサルティング機能で収益化を狙う

(言葉で言うのは簡単ですが、実際にやるのはそう簡単ではありません)

・事務的な業務は機械に任せ、人件費を削る

(これはあくまでも経費の削減にしかなりませんが)

・銀行が持っている情報を活用してビジネスにする

(これは活用の仕方によっては上手くいく分野だと思います)

こんなところかと思います。

 

どれも一朝一夕で上手くいくものはありません。

ここに関しては僕が勤めている会社もまさしく模索中です。



ちなみに、5年後、10年後には銀行はいらなくなっていると言う人もいますが、僕はそう思いません。なぜなら、銀行が常日頃行っている融資業務や決済業務は極めて複雑かつ膨大で、IT企業が取って代わるには負担が重過ぎるからです。

BtoC(個人向けの融資)の部分やCtoC(個人間での資金移動)の部分であれば十分代替し得ると思いますが、特にBtoBでは厳しいと思います。具体的に書くと、専門的で伝わらないと思うのでやめときますが。

ただ、銀行は今までストックビジネスがあることに胡座をかいていたという指摘については甘んじて受け入れ、新たなビジネスにチャレンジしていく必要があると思っています。

 

まとめ

1.銀行の業績悪化は、マイナス金利に端を発した銀行同士のダンピング競争

2.銀行の次のビジネス(儲けの種)は、みんな模索中

 

失った金利収入のことは忘れて、変わっていく姿勢が大事だと思います。

 

【参考】

日銀HP:http://www.boj.or.jp/

全銀協HP:https://www.zenginkyo.or.jp/